もう海外に行くこともないだろうと思っていた私が、全くひょんなことからなんとイギリスに行ってきました!
yuuちゃんの小学校時代の憧れの恩師で、イギリス人のMartin Page氏と国際結婚をされ、「イングランドの庭園」と言われるケント州のアシュフォードに住んでいらっしゃる剛子(つよこ)先生が、昨年来日なさった時に、是非一度七宝の先生と一緒にイギリスにいらっしゃいとご招待してくださったので、一緒に行きませんか? と誘われたのです。
最初は、ヨーロッパまでの十数時間の禁煙も大変そうだったし(私は自他共に許す愛煙家なのです!)顔を合わせたこともない方のお宅に滞在すると言うのもなにやら気が引けて、ちょっと及び腰だったのですが、やはりイギリスの田舎暮らしという言葉の魅力に抗することが出来ずに、図々しくもお言葉に甘えて初対面にもかかわらず1週間ほど滞在させていただいたのです。
童話の挿絵のようなアシュフォードの庭と家並み、剛子(つよこ)先生とご主人様のMartin氏、連れて行っていただいたカンタベリーやライの風景、パブ、チャリティ・ストアのこと、まァ、両手一杯に思い出を抱えて戻ってきました。
思い出すままに少しずつ写真を添えて記してみたいと思っています。
ネットで探した安いチケットでしたから、私たちの乗った便はインチョン空港での乗り継ぎのアシアナ航空でした。アシアナ航空って一体どこの国の航空会社なのかしら? と、それもわからずに。結局、韓国の航空会社だったのですけれどね。
ところが、直前にyuuちゃんに思わぬハプニングが・・・
空港へ送ってあったスーツケースのキャスターが取れてしまったと連絡があったというのです。宅配業者の方で代わりのスーツケースを用意するとのことで、まずは空港の宅配業者の出店の裏手の埃っぽい通路でスーツケースを盛大に広げての詰め替えから私たちの旅は始まることになってしまいました・・・
考えてみるとyuuちゃんと私との組み合わせの旅行ではこれまで必ずと言っていいほど何かしらのハプニングが起こっていたわけで、それも必ず彼女の方にジタバタすることが勃発・・・
yuuちゃん曰く 「一緒にいると先生の悪運がみんな私に降りかかってくるのよ! 良いんですけどね、別に・・・」 と。
私も思わず 「ごめん・・・」 と謝ったりして・・・ 何を謝るんだろ?? 私の悪運??
成田でのチケットの受け取り、出国手続きには思わぬ時間がかかり・・・ ツァー客はこのあたりの手続きを旅行代理店が代行してくれて、その間ゆっくりお茶を飲んだりできるのでしょうけれど、こっちは行列の尻尾にくっついて遅々として進まず、やっと自分の番になってスーツケースが機内に繋がるベルトコンベアーに乗っかって手元からなくなったらホッと一息でした。
免税店で旅行中のタバコを買い込み、いざ!
でも、安いだけあってということなのか、アシアナ航空の搭乗口は成田の一番のはずれで、まァ、歩かされたこと〜
本当は戦々恐々だったのです、自他共に認めるヘビースモーカーの私としては何が怖いかといって機内禁煙が十数時間も続くということ・・・
ですから、2時間ほどでインチョン空港に降り立って喫煙室を見つけたときのうれしさたるや!
搭乗口を確認するや否や喫煙室に駆け込んでチェーンスモーカーと化し、立て続けに2〜3本喫して、さて、この先の方が大変なんだわ〜〜 何しろまだこの先は11時間ほど飛行機に乗るんですから・・・
でも、大学時代に、九州まで、その頃は新幹線もなく寝台特急で往復していて、以来乗り物に乗るとすぐに寝込んでしまうという特技が身についているためか、足りないお尻の肉の代わりにと持ち込んだエアークッションを膨らませてほどなく爆睡! 目が覚めてもニコチンが欲しくてイライラするということもなく。買い込んだニコチンガム、高かったのにもったいなかったなぁ〜 必要なかったわ! なんて。
それほどニコチン中毒なわけではないのかしらね?? もしかしたら暇つぶしにタバコをふかしてるだけ??
禁煙も可能なのかもね。でも、禁煙を試みて挫折したりすると自己嫌悪に陥るだろうし、やっぱり禁煙なんてしないぞ! でも、タバコも値上がりしたことだし、節煙はしないとね〜 エンゲル係数ならぬスモーキング係数が高すぎですもん。 (^^ゞ
座席はちょうど翼の真横で、飛び立つ時に翼のいろんなパートが上がったり下がったりと動き続けてそれを見ているだけで興味津々! まるで子供みたいですけどね〜
ヒースローに着いたら剛子先生が迎えに来てくださっていました。初対面のご挨拶のあとスーツケースをゴロゴロ転がしながら、地下鉄を乗り継いでいざアシュフォードへ!!
yuuちゃんの代替のスーツケースはLサイズですごく大きかったの。で、私のはMサイズなんだけどその代わりに私が極端なやせっぽちで。その二人がスーツケースと人ごみを相手にヨロヨロと格闘しているその有様を、多分見るに見かねたのね。見知らぬ英国人の180センチはあろうかという大きな(横幅も!)男性が手に持った本を私に押し付けるように渡して両手にyuuちゃんのと私のとの二つのスーツケースをぶら下げて、ふうふう、ゼィゼィ、赤い顔で息を弾ませながら長い階段を上がって下さいました〜〜 おぉ〜〜さすがにイギリス、紳士の国だ!!! と、二人ともすっかり感激〜〜 Thank you!! を連発しちゃいました。(この程度の英語なら知ってるのですぅ〜!!)
でも考えてみるとイギリス紳士って大変なんだわね・・・ なんだかお気の毒でもありました。
何しろものすごい混雑で、ロンドンの地下鉄は昔からあるせいで本当に小さいし、その小ささにあわせたようにホームの幅も狭いのです。そこにあふれ返らんばかりに人、人、人・・・ しかも3人一組で警棒を手にした警察官も一杯〜 ちょっと前のロンドンの地下鉄テロなんかを思い出したりしてちょっと不安に・・・
「何でしょう? いつもはこんなに人が多くはないのよ。何かあったのかしらね?」と、剛子先生。
しばらくして気がつきました。ひょっとしてW杯?
そうだったんですよね。その日はイングランド対ポルトガル戦があって、イングランドが負けちゃった日だったのです。ですから、上半身裸だったり顔にペイントしていたりする若者もいて、ホームでもビールを片手に大騒ぎしている7〜8人連れがいましたしね。東洋人が珍しいのか、奇声を発しながら私たちの周りを両手を広げて走って回り、大サービス!??
そんなこんなの騒ぎに備えて配備されている警察官も一杯だったというわけです。イングランドが勝っていたらもっとひどい騒ぎに巻き込まれたかも〜 イギリスには申し訳ないことだけれど、負けてくれて良かったよ・・・
ピカデリーサーカスの駅で地下鉄を乗り継いでチャリングクロス駅(!)へ到着。
そこからイギリスの国鉄に乗り換えました。そこから先はすいていて、テーブルを挟んだ4人がけの席でゆったりと。1時間ちょっとでアシュフォードに到着すると剛子先生のご主人様の Martin が車で迎えに来てくださっていました。
あちこち旅行慣れしている彼は、私たちの大荷物にのけぞって〜〜 (^^ゞ
そのままその日はアシュフォードの小さなB&B、クロフトホテルへ。B&Bと言うのはBed&Breakfast、つまり朝食付のホテルか民宿みたいなところです。荷物を部屋に放り込んで1階のイタリアンレストランで軽くお食事、そのままその日はシャワーを浴びて、バタン・キューでした。!!
クロフトホテルはカンタベリーへ向かう幹線道路に面して建っていました。ですから車の往来が激しくて、またイギリスの車はかなりのスピードで走るらしくてその音も大きく、それより何より考えてみたら飛行機の中でも寝っぱなしでしたから、朝は5時前に目が覚めました。
まだどこかにほの暗さが漂っている時間。
でも、辺りにはその暗さを押しやるように様々な鳥の声が飛び交っていました。朝、日の出と共に始まる鳥たちの賑やかに啼き交わす声のことを、イギリスでは Dawn Chorus と言うのだそうです。つまり「夜明けの合唱」
ドーン・コーラスって、これなんだ・・・ 本当にコーラスだわ。何の鳥が啼いているんだろう?
ウチの付近も山ですから、夜明けと共に急に鳥たちが啼きはじめます。だけど、やはり街中とて、カラスの声が中心で・・・ こんなに綺麗な声じゃない! ギャーギャーとうるさいだけで・・・
朝食は8時からと言うことでしたので、二人で朝食前の散歩としゃれ込みました。 |
石造りの家々の間に細い小道が見えて、向かい側からやってきた大きな犬を連れた女の人がその小道を入っていきました。いかにも古そうな歴史を感じさせる石積みの高い塀に囲まれた、芝生の茂った細い細い小径。
私たちも迷わずそのあとを付いて行って見ると、その先にはかなり大きな広場が広がっており・・・
アシュフォードには山がなく、高い建物もなく、その分本当に広々していて空も抜けるように青い。広場の向こう側には小ぢんまりした赤レンガと白壁の家々が続いている。
どの家も前庭を持ち、そこには薔薇やラベンダーなどが咲き乱れていたり、大きな樹が枝を広げていたりする。
「イギリス人は古いものを大切にする。古ければ古いほどそれに値打ちを見出す。」
と、これはイギリス文学なんかに良く出てくるフレーズなんだけど、確かにそうなのかもしれない。
あちこち歩いていて、ほとんどの家がまだ木枠の窓をそのまま使っていることに気がついた。
丁寧にペンキが塗り重ねられた窓枠。それも多分代々の住人が何回も自分で補修したものなのだろう。かなり分厚く不器用な感じに何回も塗り重ねられているのが見て取れて、額縁風の飾の彫は埋まってしまっていたりする。
アシュフォードだけではない。ロンドンの繁華街、例えばチャリングクロス街なんかの商店の窓にもそういう窓が沢山見受けられた。
丁寧に補修され、愛着を持たれ使い続けられる古びた窓・・・
今時、日本ではアルミサッシ以外の窓を見るなんて、ほとんど稀なことだ。
Martinが、共に王室を持ち続けるイギリス人と日本人、それぞれの底流に流れる気質の共通性について語っていたけれど、これらの窓を見ていると今ではその共通性はすっかり失われつつあるのかもしれない、とも思われる。
私たち日本人はいつの時代からか「暮らす」ということを「丸投げ」するようになってきているのではないのか?
手間ひまのかかることを全てどこかに丸投げにして効率の良い「モノの豊かさ」だけに向かって走り続けているのではないのか?
手間ひまをかけたことから生じる他者に対する「愛着」そのものを失い続けているのではないのか?
子供の頃に読んだ サン・テグジュペリの「星の王子様」を思い出したよ。
「あんたのバラがあんたにとって大切なものになるのは、そのバラのためにあんたがかけた時間のためだ。」
便利さと効率の良さを追い求め手間ひまを惜しみ続ける生活は確かに楽ちんだけれど、それによって余りに貴重な何かを、私たちは既に失ってしまったのかもしれない・・・
窓が古びた・・・ サッシ屋さんを呼んで新しい窓に付け替えなければ!
私の子供はなんでこんな風になってしまったのだろう・・・ 学校で躾をしてもらわなければ!
サッシはお金をかければ解決することだけれど・・・ 浪費とも思えるほど沢山の時間を費やすことでしか解決に向かわないことだって沢山ある・・・ 例えばいとしみ合う心のありかた・・・
もっとも、Martinに言わせれば、さすがに親殺し・子殺しまでは行かないけれどイギリスでも教育の問題は沢山ある、とのことだったけれど。
Page家の庭には沢山の鳥たちが訪れていた。 |
夕食の準備に取り掛かりながら、鶏肉の皮を剥いた。
この皮、どこに捨てますか?
いいのよ、庭に抛って頂戴。
庭に? どのくらいの大きさに切って抛ればいいのかしら?
そのままでいいのよ。
こんなに大きいままでいいのかしら、と思いながらも、私は庭へ出て、芝生の真ん中に鳥の皮を置いた。それから、そう、ものの30秒も経っただろうか、4〜5羽のカモメが急降下して来たのだ。
一枚の皮を飲み下し、もう一枚を咥えて飛び去るカモメ。ありつけずに屋根の上で物欲しげに庭を見下ろしているカモメもいる。
カモメは思ったよりも大きな鳥で、翼を広げると私が両手を広げたくらいの大きさがあるような気がする。もしかしたら余りに驚いて、より大きな印象を受けたのかもしれないが・・・
カモメが来るんですね?? 海が近いのかしら?
そうねぇ、割と近いわ。ドーバーも近いし。
カモメはどうやらPage家の庭にエサが出る時間を知っているらしい。毎日それらしい時間になると何羽かがこの家の真上を旋回していた。時々、まるで催促をするように車庫の屋根を掠めて飛んで行く。
どの鳥も多少の距離ならば決して恐れるそぶりを見せない。やはり普通に生活の中に溶け込んでいるのだろう。
時々、隣家の猫が鳥を狙ってだろうか、塀を乗り越えてやってこようとする・・・
そういえば、ロンドンの街中に広がるバッキンガム・パレス・ガーデンにも、驚くほど沢山の鳥がいた。さっぱり名前はわからない奇妙な鳥たち。 沢山の鳥と沢山の人間・・・ 膝に届かないくらいの低い柵に隔てられて向こう側は鳥たちの世界だった。
イギリスでびっくりしたのは、スーパーなどに並んでいる野菜の種類の少なさだった。
欧米人は腸が短いから、日本人ほど野菜が必要ではないと言う話を読んだことがあるのだけれど・・・ それにしてもどこのスーパーでもキャベツは一度も見なかったなぁ・・・
普通、ロンドンのような都会のアパート暮らしはともかく、田舎ではほとんどの家庭が自家菜園を持ち、そこで収穫した野菜が食卓に上るようだった。だから基本的に「路地物」の季節野菜である。
自家菜園はプライベートガーデンの奥にしつらえられていたり、郊外の農園を借りていたりするらしい。Page家では郊外に畑を借りていた。区画ごとに借りられるようだった。
ジャガイモ、インゲン、ソラマメ等々が植えられ、片隅には大きな林檎の木がたわわににぎりこぶしよりも一回りほど小さな実をつけている。誰のものでもない大きな大きな林檎の木。季節が来るとその実を収穫してジャムを作ると言うことだった。
林檎の木の側にグズベリーが実っていた。鳥に食べられないようにネットを被せてある。
グズベリーはイギリス文学に良く登場するから名前を聞いたことはあるのだが、実物を見るのは初めてで、ちょうど親指の頭くらいの大きさの黄色がかった薄緑の、ベリーと言うよりは実というようなつるつるした皮をしている。どういうわけか、グズベリーと言うと私は熊さんが食べると言う印象を持っているわけで・・・ 和名は「すぐり」だ。かなりの酸っぱさである。熟すと赤くなって甘いらしいのだけれど、熟す前に収穫するのだそうだ。
「これはジャムやソースにするのよ。私たちが畑を借りたときに、もう既にここにあったのよ。雑草と一緒にね。」
お隣の畑は草ぼうぼう・・・ 借主の奥さんが入院してしまって今はほとんど手入れが出来ない放置状態にあるとのことだった。草に埋もれるようにラズベリーが赤黒く実っていた。
どうせこのままになってしまうだろうから、と、その実も収穫させていただいて、それもジャム用に。
ジャガイモとインゲン、ソラマメをその日の夕食用に収穫し、道端に立っている共用の水道の水を如雨露に汲んで何回も往復して水撒きをしました。何でもイギリスはこの夏、ちょっと水不足が心配されているとのことで、自宅の庭ですら、ホースによる水撒きは禁止されているとのこと。ご自宅でも如雨露が活躍していた。
帰国後に、高校時代の同級生で造園業をやっている無限堂氏から電話が来た。彼も、私たちより10日ほど前にイギリスから帰国したばかりだったとのことで、自然に話はイギリス談義になり・・・
「野菜の種類が少ないのにはびっくりしたわ。」
「そりゃそうだよ。イギリスにはハウス栽培ってのがないんだよ。だから全部その時期の路地野菜ばかりなんだよね。」
「あーー それで一度もキャベツを見なかったんだ〜」
日本では年中キャベツも胡瓜もトマトも茄子も、当たり前のように店先に並んでいる。出盛りの頃には少し安くなると言う程度のことで、真夏には寒冷地でキャベツを作り、真冬にはトマトをハウス栽培しているからなんだよね。今では水耕栽培とやらで、野菜も工場で作ることすらある。輸入物も驚くほどたくさんなんだし。
だから子供たちどころか大人だって、トマトの旬はいつなのかすらわからなくなって、その代わりにそれらを運ぶための流通システムが夜昼なく一日中動き回っているわけだ・・・
当たり前の如く・・・ それって幸せなのかしらね?
まぁどちらかと言うと菜食主義者に近い私には、野菜が豊富なことは確かにありがたいことではあるのだけれど。帰国した日、家に帰る途中でスーパーに立ち寄って、野菜を買い込んじゃいましたもん。 (^^ゞ
この続きはまた後日!