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2007・筥


今年は久しぶりに筥を作ります。2002年以来の「角物」です。
今年のテーマはバックの「黒」
30年以上前に、サントリー美術館で出会った並河靖之作の「四季花鳥図花瓶」その背景の艶やかな黒!!
あの作品が、私が有線七宝の立体を目指すきっかけでした。その夜、あまりの感動に夢の中で並河靖之さんとしっかりお話しちゃったくらいでした。 (^^ゞ
ところが、黒は難しい・・・ 釉薬の洗いが少しでも悪いと、或いは糊が強すぎたりすると、糊ジミといって靄のような汚れが出てしまうし、研磨も余程丁寧に研ぎあげないと、かすかな傷でも目立ってしまう。
そんなこんなで手が出ずにここまで来てしまいました・・・ でも、そろそろ取り組んでみないと、今度は年齢から来る体力切れでやれなくなってしまう。そんな思いから今年こそは取り組んでみようと・・・ その準備のために、黒ほどではない黒紺を2年バックに使ってみて、今なら何とかやれるかな? と思った次第。
さて、うまくいくでしょうか??


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 素地 2007/05/15

素地 焼成台

左は素地です。七宝の素地の場合は、焼成するために継があるとそこからはがれてしまいますので、銅の一枚板を鍛金で手絞りしたものです。この大きさになると勿論自力で鍛金など出来ませんので、ここまでは発注仕事です。幸い、静岡に鍛金をなさる方がいらっしゃいますのでそちらに昨秋から制作をお願いしておいたものです。
最終的に切り落とす「歪み止め」のための銅板が周りに1cmほど張り出していますが、角物の場合はこれだけで歪みが回避できるとは言い切れませんので、更に焼成台を作ってそれにはめ込み、焼成台ごと焼成します。この焼成台は自分で糸鋸を引いたりして作ります。不細工さがいかにも手作りでしょう? 右側は下地釉をのせて焼成台にはめ込んだところです。

下絵の構成、蓋の方は随分苦労しちゃいました。やっとこれでいいかな? と・・・
試し焼きはこれからです。頭の中では色彩が浮かんでいるのですが、ぶっつけ本番ってワケにも行かないので作品の植線と平行して平板で作ってみるつもりです。
またこれから2ヶ月間、この制作日誌ともお付き合いくださいませ〜〜





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 下絵 2007/05/17

下絵

その後、箔の貼りこみを済ませて、下絵を付け終わったところです。
これから3日ほどかけて植線を致します。





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 植線と試作 2006/05/19

植線 試作

本日、銀線の焼付けと共に、試し焼きを完成いたしました。植線の方は、無事に焼成終了。試作の方は多少の反省点があり、そのあたりを修正しつつ、本番に入ります〜〜
何だか、強烈な色使いになっちゃいましたけど、まぁ、作品そのものが小ぶりだし、それにもともと、持って生まれた性格がキツイんだからしょーがない・・・ (^^ゞ





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 一番差 2007/05/20

一番差 焼成

今朝は7時から一番差に入りました。色差が終わったのが3時半。途中、久しぶりに久美ちゃんから電話が来たり、来月末から始まる浜岡カントリーでの「自遊人の丘展」の搬入の打ち合わせの電話が来たりで、両方とも長電話になっちゃったから、施釉時間は正味6時間って所かなぁ?

バックは黒ですので、糊ジミが出る可能性が充分すぎるくらいありますから、かなり糊抜きをして、ついでに焼成も済ませました。何とか糊ジミを作らずに焼成できました〜♪





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 二番差 2007/05/22

二番差

本日は、朝6時から仕事開始でした。で、やはり座り尽くめの6時間で、正午に施釉終わり。
その後は本日が最終日の知人の染織家の個展に表敬訪問に出かけ、ちょっと話し込んで帰宅が3時。それから焼成をいたしました。

何しろ、今年のテーマは「黒地」ですから、普段より丹念に糊抜きをして、おかげさまで今のところ全く糊ジミは出ていません〜〜 ちょっとゴキゲン ♪
つややかな黒地に向かってまっしぐらですぅ〜

一番差に比べると大分色も濃くなって、落ち着きが出てまいりましたでしょう?





 三番差 2007/05/24

三番差

三番差が終了しました。おかげさまで糊ジミは全くありませんし、形も歪まず、水平もちゃんと出ていますから、大丈夫だと思います。
念のため、しばらくはそのままにして様子を見ようと思っています。
形を狂わせると、焼成後数日経ってからひび割れが入ってくることがあるのです。まぁ、これは大丈夫だろうと確信はしているのですが、釉止めを切り落としてしまった後では焼き直しが出来ませんから・・・ 万が一の場合に修正のための焼成ができるように様子見、ということです。

29日頃から釉止めの切り落とし、荒砥かけに入ろうと思っています。後は丹念に研磨するだけ!!

焼きっぱなしの状態ですので、反射光が入って、写真がちょっと見にくいかもしれません・・・





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 荒砥 2007/05/30

荒砥

やっと釉止めを切り離して荒砥をかけはじめました。

実は、3番差を焼き終わった二日後に、裾のあたりに小さな貫入、つまりヒビを発見しちゃったのです。それからが、さァ、大変!!
2日ほどは毎日ヒビを眺めては、どう修正するかで悩み抜きました。
ヒビが入ったからといって、単純に焼き直すだけで済むものではありません。ヒビが入るのには必ず何かしらの理由、つまりは不都合なことがあるわけで、そこを根本的に修正できない限り何回焼いても同じことの繰り返しになっちまう・・・
一体どこにこのヒビの原因があるのか? 自分のした仕事を思い出せる限り振り返ってみて、原因と思われることをあれこれ探して・・・

何しろ七宝の場合は焼成回数が増えるということはリスクも増えることに他ならず、修正のための焼成で何回も焼くわけには行かない、一回こっきりで勝負してしまいたいのです。 二日間考えて、こらしょ!と決心を固めて、28日の夜に修正のための焼成をいたしました。何とか無事に直ったようです〜〜♪
で、今日は午後から研磨に入った次第。

やれやれ、2002年以来5年ぶりに手がける角物はやはり一筋縄では行きません、これからも覚悟してかからなくっちゃ!
久しぶりに焦りまくった数日間でした・・・


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 中砥 2007/06/01

中砥

中砥の工程に入っています。昨日は朝から夜まで、と言っても休み休み、ビデオを見ながらなんですけれど#800の砥石をかけ続けました。夜には腕がパンパンで、10時にはダウン。
今朝は7時から#1000に入りだして、もう一息といったところでしょうか。
おかげさまで貫入の入る気配もなく、この分なら大丈夫そうです!!
時間はまだ余裕がありますので、焦らず今日はまだ一日#1000をかけ続ける予定です。

明日はyuuちゃんのお教室展の陣中見舞いで伊東まで行ってきます。腕の筋肉にとっては丁度いいお休みになるでしょう〜♪




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 仕上砥#1500 2007/06/03

#1500

最初の仕上砥#1500に取り掛かりました。これが一番私にとってはつらい工程です。
このあたりから艶が出始めますが、それと共に曇りガラス状の時には見逃していた研ぎ傷も見えてきます。場合によってはちょっと工程を後戻りしないと、その傷は消えないわけで・・・
つまり、行きつ戻りつ、の工程なのです。白っぽい色のものは多少の小さな傷は目の方が誤魔化されて 見えないのですけれど、黒地だとほんのちょっとした傷でもはっきり見えて・・・
あと2〜3日はこの工程が続きそうです。





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 仕上砥#6000 2007/06/07

仕上砥#6000

あーーーどーしよう、止まらなくなっちゃった・・・ かければかけるほど、アラが見えてくる!
一心不乱に研磨していると、普段は見ないくらいの小さな傷が、傷の方から目に飛び込んでくる。と、これは毎度のこと・・・仕上がってしまうとほとんどわからない・・・はず・・・
で、#6000はこれで終わりと致します。キリがないよ・・・
あと2日ほど、最終の研磨剤、ベンガラ(酸化第二鉄)を束ねた荒縄につけて磨きます。それでオシマイ! この先は体力次第だな・・・ 何しろ力を込めてキュッキュッっと磨くのだから息切れするわけよ。そう続けても出来ないしね・・・
鏡面に近づいていますので、光よけに閉めたカーテンが映りこんでいますけれど。



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 仕上砥の仕上がり 2007/06/10

研ぎあがり正面 研ぎあがり上部

これで私の仕事は終了しました。正直言って、体力切れです・・・(^^ゞ
左側の写真は正面斜め上から、右側の写真は真上からのものです。
後はこれを大間氏のところに持ち込んで、内側の仕事をしていただきます。
予定としてはローズウッドで、と思っているのですが、来週、大間氏のところへ持ち込んで、形と共に使う木の打ち合わせをしてまいります。
最終の仕上がりは多分、7月20日くらいになる予定で、戻ってきたらまたお見せいたしますね。





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 完成 2007/07/15

仕上がり 仕上がり

本日、大間氏より電話が入り、完成したとのことで早速受け取りに静岡まで行ってまいりました。
筥はローズウッドですが、蜜蝋で仕上げに艶出しをしたら、普通はもっと赤みのある木なのですがかなり黒っぽい仕上がりになっていて、私の作品の地色の黒と良く合っておりました。うれし〜〜〜


筥の内部

で、これが筥の内部です。天板はちゃんと表のふくらみに合わせて丸く削ってくださっています。綺麗でしょう??
26日に発送、審査結果は8月21日です。さて、結果はどうなりますやら?
まァ、自分では大層気に入っておりますので、結果がどう転ぼうとあんまり後悔はしないで済みそうです〜〜♪
題名は「寒紅」といたしました。





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